熱戦が繰り広げられた「第55回日本女子オープン」のリポート

10月2日までの4日間、紫カントリーすみれコースにおいて「第55回日本女子オープン」が開催され、勝みなみ選手が通算3アンダーで逆転の大会連覇を果たしました。この白熱した戦いをご覧になった方も多いでしょう。今回、私が紫カントリーすみれコースでラウンドレッスンをさせて頂いているご縁から、日本女子オープンのラウンドリポートをさせていただきました。

選手達の練習風景

そこで私が見た選手権の光景を少しご紹介いたします。

18体の動物達

選手権当日、会場には沢山のテントにローピングが設置され、最終ホール付近にはホスピタリティマーキー、ギャラリースタンドが建ち並んでいました。熱気と興奮に包まれたいつもとは違う印象のすみれコースでしたが、ゴルフ場内に鎮座する紫稲荷、彫刻家、今里龍生氏によるコースの地形、雰囲気などを表現した18体の動物たちが選手たちの緊張感を和まされている様でした。

紫稲荷本宮

日本女子オープンといえばJGAのセッティングの難しいセッティングはよく知られており、深いラフや硬くて早いグリーンが毎年女子プロたちに厳しい戦いを強いています。かく言う私も1990年から10年間「日本女子オープン」に参加しましたが、アンダーで回った記憶はありません。

大会開催が決定した4年前から、すみれコースでは様々な準備が進められていました。関係者に話を聞くと、設備面では水道施設がなく、現在も井戸水を使っていることから、コースへの散水や仮説トイレなどの水の確保から、電力電源の確保、芝コンディションの調整など、この4日間のために4年の月日をかけて準備が行われました。当日のラフは刈高2.8㎜、コンパクション12kg/㎠、速さ12.0〜.5フィートのグリーンなど、通常のトーナメントとは比較にならないほどの難度の高さです。しかし、セッティングはただ難しいだけではなく、いいショットが打てた選手はスコアへつながる様な仕掛けでなくてはいけません。今回のすみれコースは刈高2.8㎜、コンパクションは12kg/㎠、速さは12.0〜.5フィートの設定になっており、試合後の報道ではそのセッティングに賞賛の言葉が記載されていました。コース管理の方々の並々ならぬ努力が報われたことは大変嬉しいことです。

14番の深いラフ

今回私は14番ホール(416ヤード、パー4)のセカンド地点に拠点を置いて観戦をしていました。少し長めのミドルである14番ホールは、軽く右にドックレッグしており、右側に大きな木があり、ティショットの打ちどころが鍵になります。多くの選手は右側から木を超えフェアウエイセンターを狙って打ちますが、ボールの落ちどころによっては左の傾斜から深いラフへボールが転がり落ちます。すると深いラフからはセカンドでグリーンを狙うのはほぼ不可能。ここからは刻むことになりますが、中にはティショットを打つ選手もいましたが、硬いグリーンではボールが止まらないために、結果ボギーという選手が多く見られました。まさに最難関のホールロケーションでした。普段であればバーディーチャンスを狙えるホールも、セッティング一つで難度がここまで上がってしまうのです。

今大会で勝敗を左右したのは、いかに我慢ができ、正確なティーショットが打てたかにあったと思います。女子選手は腕力がないため、深いラフからボールを打つのは至難の業。高いスピンの効いたボールを打つためにもフェアウエイキープが絶対条件でした。このような難しいセッテイングの中で、上位に入賞できたのは、今季調子が上向きな真の実力者であり、攻めるゴルフより、4日間守りに徹したステディなゴルフを展開した勝選手が優勝したのは納得の結果だったと思います。

アマチュアNo.1馬場選手
4日間スタンバイされているお医者様

ゴルフトーナメントには、多くの人が関わり、多くの時間とお金を費やします。もちろん主役は選手ですが、この舞台を作り上げているコース関係者はじめ、メンバーの方々や医療関係者、ボランティアスタッフ、大会役員、TV中継スタッフなど、多くのバックヤード関係者も選手達と共に戦っていることを私たちは忘れてはいけません。

開場60周年を超え、日本オープンゴルフ選手権大会、日本女子オープンゴルフ選手権大会2大メジャートーナメントを開催した紫カントリークラブすみれコースを私は誇りに思います。きっと命名者の吉川英治さんも今回の成功をお喜びになっていることでしょう。

松澤知加子